地域消防力の強化に向けて
(1) 常備消防の現状と課題について
(2) 非常備消防(消防団)が抱える課題について
(3) 防災教育の充実について
質問
無所属の由田です。一般質問を行います。
初めに、今年は水平社創立100年目の節目の年となっています。1922年、大正11年3月3日に、京都市の岡崎公会堂に被差別部落の人たちを3,000人集め、水平社創立大会が開催されました。「全国に散在する我が特殊部落民よ、団結せよ」から始まり、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」の言葉で結ばれる日本初の人権宣言というべき水平社宣言を満場の拍手をもって採択したと伺っています。この宣言は私たちの解放運動の原点であり、先達が残した戦争は最大の差別であり、最大の人権侵害であるということを胸に刻みながら、改めて反差別、反戦、平和の闘いを行っていきたいというふうに決意をしています。
今、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナに侵攻しています。先達が言った戦争は最大の差別、そして人権侵害であるということは、私も含め、議員の皆さん、そして県民の皆さんもマスコミを通じて、あのウクライナの惨状、あの画面には差別と人権侵害、もっと言えば、生存権の否定をあの戦渦のさなかでウクライナの国民は味わっているということに思いを寄せなければならないと思います。私たちは、このプーチン大統領が核戦力を背景に露骨な武力をもって現状変更をする、その民主主義に反する行為に大きな声を上げなければならないと思っています。
先ほど、水平社宣言を紹介する際に、「全国に散在する我が特殊部落民よ、団結せよ」、原文のまま紹介をいたしました。現在では、この特殊部落民という言葉は不適切な表現となることを申し添えさせていただきたいというふうに思います。
それでは、2月県議会の一般質問を通告に従って行います。
今回の質問は、去る1月17日の県政に対する知事要望項目の主な部分でありますが、質問の構成上、重複すると思いますが、平井知事にはお許しをいただきたいというふうに思います。
また、一昨日、自由民主党鳥取県議会の中島議員の質問の中で、私が用意した質問に大いにかぶってしまい、重複部分については質問を削除していますので、よろしくお願いいたします。
常備消防について
初めに、常備消防について伺います。
県内の新型コロナウイルス感染者が急増する中、1月24日、25日の両日、西部消防局の江府消防署で2名の感染者が判明、そして、その後の検査でさらに8人の感染が確認されました。西部消防局では、他の消防署からの人員派遣により業務を維持しているという記事に触れ、強い衝撃を受けました。その後、中部消防局でも西倉吉消防署で感染者が確認され、出動体制を維持していくため、勤務編成の組替え等のやりくりで急場をしのいだと伺っています。
本県では、東・中・西の消防局が火災、その他地震や風水害の各種災害から県民の生命、身体、財産を守るという使命を全うすべく、懸命に努力をいただいています。しかし、総務省消防庁の消防力整備指針に対する本県の消防職員の充足率は、近年低いまま推移しています。今後、激甚化する各種災害に迅速かつ的確に対応していくためにも、消防職員の増員を含めた消防体制の強化が課題と私は認識していますが、知事の所見を伺います。
非常備消防、消防団について
続いて、非常備消防、消防団について伺います。
消防団は、火災等の発生時に常備消防の消防隊と共に連携して消火活動や避難誘導、避難者の支援等、幅広く重要な役割を担っています。しかし、県内各市町村においては、それぞれ定めている条例定数に全て達していないなど、団員の確保に苦労していると承知をしています。消防団員確保に向けて、鳥取県も各市町村と一緒になって広報活動の強化や各種施策の実施に取り組んでいくべきと考えます。また、消防団員の高齢化も進み、消防資機材を活用した消火活動に支障を来す事態も懸念されます。高齢消防団員や女性消防団員にも活動しやすい軽量な資機材の装備品の導入に向けて、県から必要な財政的な支援をお願いするものです。
そして、質問の最後に、足羽教育長に防災教育について伺います。
防災教育について
防災教育は、特別なものではなく、日常の延長線上にあると私は考えます。様々な危険から児童や生徒の安全を確保するための教育と理解しています。鳥取県の小・中・高、発達段階に応じた防災教育について、以下お伺いをいたします。
初めに、発達段階における学習目標についてであります。
本県の小・中・高の発達段階における防災教育の学習目標の設定は、県下全域統一性を持って行われるべきと考えます。防災教育の内容を含め、現状はどうなっているのかお伺いをいたします。
次に、防災教育を指導する教職員の資質の向上に向けた取組について伺います。
防災教育は、命を守ることを学ぶことではあるが、災害発生の理屈を知ること、あるいは、自分の住む地域を知ること、災害発生時の対処の仕方を学ぶことだとも言われています。新学習指導要領でも、生きる力を育む防災教育が求められています。防災教育の成否は、教える側にあると言われています。防災教育を指導する側の教職員の資質向上に向けた取組状況を伺って、壇上からの質問といたします。
知事答弁
◯知事(平井伸治君)(登壇)由田議員からの一般質問にお答えを申し上げたいと思います。
まず、冒頭、水平社の創立のこと、さらには、世界の平和も含めたお話がございました。非常に含蓄のあるお話でございまして、いろいろと思い起こすこともありながら、伺っていたところであります。
水平社宣言、大正11年3月にその宣言をまとめられたわけでありますが、最後のところの「人の世に熱あれ、人間に光あれ」という、これは人権についての不朽の名言として私たちに記憶されるところとなりました。その一節の中にも、「兄弟よ、吾々の祖先は自由、平等の渇仰者であり、実行者であった。」というふうに記載もされています。やはりそこに通じる一つの大きなものというものは、人間一人一人、いわゆる出自だとか、あるいは人種だとか、国籍だとか、そうしたことでの違いがあっても、人間としての本質に変わりがないと。そして、自分たちは人間の価値を信じて、自由と平等、これを守り通そうというふうに頑張ってきた。全体としては、いろいろと今おっしゃるような不適切な言葉という表現もありましたが、いろいろと当時の言葉を尽くしながら、すごく強烈なプライドといいますか、人間の価値に対する信念というものがうたわれているからこそ、胸に通ずるもの、万人に通ずるものがあるのではないかというふうに思います。その大正11年から100年という節目になりましたけれども、私どもとしても、その価値ということを、価値観というものをぜひ今日でも共有をし、これを今の世界の中で人間の価値、戦争の愚かさということを私たちはもう一度考えなければならない、このように思う次第でございます。
消防につきまして2点のお尋ねがございました。1つは、常備消防であり、2つ目は、消防団のことでございました。
常備消防につきましては、その職員の充足率について焦点を当てたお話がございました。現在、本県の場合、職員の充足率ということでいいますと、中部が62%、また東部が66%、西部が60%というふうに大体3分の2程度ということかなと思います。数字としては非常に低いように思うのですけれども、別の指標を取ってみますと、これは消防局の名誉のため、ちょっと申し上げていると思って聞いていただいたらいいと思うのですが、人口1,000人当たりでいきますと1.39人、本県の消防職員がいらっしゃいます。これは、全国の1.2人ぐらいを実は上回っているわけですね。そこがよく分からないところだというふうに思われるのではないかと思います。
あと、由田議員も当然ながら、ふるさと広域連合の議員なども御経験と思いますが、いろいろと議論をされていて、では、消防力が著しく本県が劣っているかというと、内部として感じられるのは、そうでもない。むしろ頑張っているというふうに多分皆さん、ふるさと広域連合でも議会も評価されていたのではないかと思います。実際そうでありまして、どこに淵源があるかというと、本県は3消防局に統合される中で、言わばスリムかもしれませんけれども、強靱な体力というのをつくりましたし、そこには前の倉吉の消防局や、あるいは東郷だとか、羽合だとか、いろいろございまして、そういうのをまとめてくる中で、結局人材というものも共有されましたし、装備も大きくなり、ふるさと広域連合ができて、重要な向上が図られたことは多分事実だと思います。そういう広域消防化がいち早く成功したというところが一つあって、一概に中部の消防局が非常に人員が足りないというような感じでもないかなと。
どういうことかというと、ちょっと説明が要るかと思いますけれども、実は車両のほうの充足率を見ますと、東部、中部とも90%の充足率でありまして、それから、西部は100%であります。ほぼ本県の場合は、装備品的には結構なものを持っています。中部も最近、車両のほうも新しいものを入れられて、例えば水陸共用バギーを導入されたり、それから、水上で救助活動ができるようなボートを調達されたり、あるいは津波だとか大地震対策の専用車両、高度な車両を導入されたり、かなり車両の整備を上げてきているのもまた事実なのですね。
ちょっと前の消防局長さんがジャイアンツファンだったので、なぜかふるさと広域連合はみんな、ジャイアンツのオレンジの柄に消防車が塗ってあるのですけれども、何か色を塗り替えたそうですね。そういうようなちょっとエピソードもありますが、ともかく装備品は全部きれいにそろえられて、最近もそういう水陸両用バギーみたいなもの、あれは真備の水害に思いを起こされて導入されています。
そういうように、車両を導入されることに併せて、それで実は必要な人員の数が増える仕組みになっているのです。これはちょっと仕掛けがありまして、だから、平均で見ると、全国よりは消防職員は多いのですけれども、ただ、車両をいっぱい、ちゃんと導入していって装備を上げてくると、必要充足数というのが今度は増えてきちゃって、それで人員が足りないように見えるということです。そこを例えば乗換運用をされたり、それから、いろんな隊の工夫をしたり、それから、火災の状況などに応じて人や消防署の配置をされると。この辺は非常に広域連合でも議論されたと思うのですが、そうしたことをある程度時間をかけて効率的につくっていますので、恐らく一定程度の消防力は確保されているのではないかと思います。ただ、これは不断の努力が必要なところでありまして、災害の形態も変わってきますし、それから、火災の発生状況なども変わってきますし、最近のように新型コロナで救急搬送のそういうニーズも変わってきます。ですから、やはり消防職員の採用だとか、それからその研修、レベルアップにつきましては、やはり大きな力を割いてやっていかなければならないことは事実でございますし、議員の御指摘なども踏まえながら、今後も3消防局と協調させていただきながら、消防力の強化に県も協力をさせていただきたいと思います。
消防団についてでございますけれども、これは、確かになかなか条例定数を満たすということにならず、長期的には減り加減で来ていると。これも全国も同じような状況でありまして、また、このたびの議会でも少し議論がありましたが、政府のほうでは報酬の基準を引き上げたり、出動手当、災害時8,000円というものを創設されたり、これを、各地で順次今、議会中で導入しているというような状況になるなど、いわゆるそうした処遇も絡めながら、しっかりと消防団員の確保、全国的には向かわなければいけないところだと思います。
本県でも実はそれぞれの地域でいろんな工夫もされていまして、米子であれば、機能別消防団員というのをつくっています。これは、サラリーマン兼業でやる傍ら、任務の内容は若干変わっていると、違いがあるということでありますが、大体500人余りの総団員数の中で25名が機能別消防団員、ですから、米子は割とそういう意味では充足率、数はきちんとそろえているほうになります。
また、その勧誘の仕方とか、そういうリクルートのこともあると思うのですね。三朝町などは、消防団員が309名いらっしゃる。全県的にも多いほうでございます。こちらのほうは谷ごとに、三朝は手のひらみたいに谷がありますけれども、その谷ごとに分団があると。そして、集落ごとに班が形成されていまして、そういう分団で後の人をリクルートするシステムが出来上がっているわけですね。一定程度の人員が取れていることになりまして、ですから、これは普通の消防団よりももう少し強い任務が可能になると。だから、中部地震があったときも、いろいろと消防団が動いて、安否確認だとか、それから危険箇所の割り出しだとか、様々なことをされたわけであります。そういうようなことというのがやはり、そうした地域の特性の中で生まれてきています。確かに、こういう工夫をいろいろとやっていかなければならないところなのかなと思います。
我々としても、例えば装備のことも議員のほうから御指摘がありましたが、だんだん高齢化も進んできますから、それに応じた装備品ということもあるのではないかと。普通は65ミリのホースを使うということでありますが、最近は50ミリとか40ミリという小さな規格も使われるようになってきています。大分ポンプ車の性能などもよくなってきたりしていますので、ホースが多少小さくなっても、十分に放水力はあるわけですね。要は、ホースをどんどん延ばしながら、あれを抱えて走るわけですね。ですから、大変な重労働なわけでありますけれども、やはり小さくなれば、扱いがよくなる。そういう意味で、高齢化とか、あるいは女性消防団員だとか、そういうように今、だんだんといろんな方が入られる中で、そうした装備の改革ということもあってもいいのではないか。現に伯耆町とか、日吉津もそうですかね、幾つかはホースをそうした細めの規格に変えてきているところもあります。そういうのを県のほうの交付金で購入の助成をさせていただいたり、また、こういういろんな新しい装備品につきまして、自治総合センターという国の団体のほうでのコミュニティー補助なども活用されながら購入されている実態がございます。もちろん消防団の様々な車両なども、辺地債、過疎債なども活用しながら装備をされているというようなことであります。こういうようなことを総合的にいろいろやりながら、消防団員の確保ということを全県的にも進めていければと思いますし、私どもも県政だよりなどで特集も組んだりして、消防団員の募集に県も協力させていただきたいと考えております。
足羽教育委員会教育長答弁
◯教育委員会教育長(足羽英樹君)由田議員の一般質問にお答え申し上げます。
私のほうには、防災教育に関わりまして、教育の目標の設定や防災教育の内容等の現状についてということと、それに関わる指導する教職員の資質向上という2点をお尋ねいただいたところでございます。
今、知事のほうからもありました消防団について、私も自衛消防団という地域の消防団の一員として、毎月の放水ポンプの点検や消火栓の点検、そして危険箇所等、地域の狭いエリアではありますけれども、そういう活動に取り組んでいるところでございます。それらの活動が一体何のために行われているのだろうか、改めて考えたときに、この自分の命を守ること、そして、地域の人々の命を守る、そのことが地域をしっかり支えていくこと、自助・共助・公助という言葉がございますが、学校教育の中でも、そういう活動につながるような防災教育を展開する必要があろうというふうにまず基本的に考えているところでございます。
そうした防災教育の目標については、学習指導要領にも規定をしておりますが、発達段階に応じまして、例えば小学校では、進んで自身が安全な行動ができること、それから、周囲の人の安全に配慮ができるというふうな段階から、高校になれば、社会の一員としてという言葉がついてまいります。周りの人の安全を守る、安心・安全な社会づくりに貢献できる資質を養う、そういった目標が設定され、それに基づいて具体的な学習を行っているところでございます。ただ、防災教育という科目は当然ございませんので、社会であったり、理科、社会では、小学校4年生で防災マップを使って、では、地域の中での危険箇所で実際に水害が起こったときにどう避難するかとか、そういうふうな学習を積み重ねたり、具体的な学校での教室内での学び以上に、避難訓練がやはり体験的な学びとしては大事になっているところでございます。例えば倉吉市の西郷小学校では、浸水想定区域内にあるということから、大水害が起こったとき、どうするかということで、近隣の高台に避難するという具体的な避難訓練を行っておられたり、また、倉吉の河北小学校では、近隣にそうした高台がないので、2階以上に避難する、校庭ではなく、2階以上にという、そんな具体的な取組をされていらっしゃる。そういう実体験的な学びというのが私は大事ではないかというふうに思っているところでございます。
それ以外にも、先ほども話がありましたが、実際にそうした活動に当たられている消防署を訪問して、消防職員から、実際にどう避難すべきか、どうみんなで命を守るべきか、そんなお話を聞いているところでございます。その意味で、そうした指導に当たる教職員の資質ということ、私は、資質というよりも、真剣さをいかに子供たちに伝えるかという姿勢ではないかなというふうに思っているところでございます。
避難訓練にしても、以前にもちょっと申しましたが、年に2回、3回とやりますけれども、生徒たちが腕を組みながら、話をしながらゆっくり歩いて校庭に避難する。一体何の避難訓練だ。ここに教員の真剣さが私は問われているのではないかと思います。こういう想定、火災、地震、水害、それを想定したときに、どんな姿勢で子供たちにその真剣さを伝えていくことができるか。それは、やはり教職員自身がその真剣さを持てるような取組が必要であろうと思っています。
今年11年目を迎えた東日本大震災でございますが、昨年、そして今年、その教訓に学ぶということで、実際に遺族となられた中学校長を招いての当時のお話を教職員が伺う、そんな研修会を実施しております。やはりそうした実際に体験された方の声を聞けば、教職員の心にも、本当に子供たちの命を守るには、教員、我々がどんな動きをするべきか、それをどう伝えるべきかということで、真剣さというものの改めて気づきがあったということも伺っております。単なる研修を重ねるよりも、そうした実態に学ぶ、姿に学ぶという、そんなことを重ねながら、しっかりと子供たちへの指導に生かせるような教職員の真剣さ、資質、その向上に努めてまいりたいと思います。
質問
◯5番(由田隆君)ありがとうございました。それぞれ個別に追及質問をしていきたいと思います。
私は、このたびの質問に当たって、県内3消防局に新型コロナ感染対策及び勤務体制、年休等取得率状況等を聞くために、11項目について文書による質問をいたしました。その中で、目に留まった回答を1点紹介します。消防職員の勤務状況の項目の中で、消防職員の充足率は近年低いまま推移していますが、消防職員の充足率に対する認識を伺い、消防局では、「直近の令和元年度消防施設整備計画実態調査では、当局の充足率は59.8%と全国的にも低い数値ではあるが、この数値は自治体が定めた目標に対するもので、消防力の強弱を示すものではないと認識している。中略。現時点では、住民の負託に応じているものと考えている。」と回答しておられます。私は、実は昭和47年に今の中部広域の前身の中部消防に消防士として勤めさせていただくことになり、その年、県内には消防学校がないということで、島根県の消防学校に入校いたしました。その消防訓練の中で、ある教官がこのようにいつも口酸っぱく言っていました。今、君たちに教えている消防訓練の訓練礼式は、旧帝国陸軍歩兵操典をその教材として、消防訓練礼式として君たちに教えている。その陸軍歩兵操典は、眼前の敵にひるむことなく、部隊協調して敵をせん滅すべく、あらゆる手段を使って攻略する。そして、その精神は、今の消防精神、目の前にある火災、その他の災害にひるむことなく、消防精神を持って、与えられた人員と装備で住民の生命、身体、財産の被害を軽減すべく万全の力を注ぐ、これが消防精神であるということを伺いました。
私は、この西部消防局の回答を見たときに、その消防精神を感じたのです。充足率は低いけれども、消防の強弱ではないという、その意気軒高な姿勢に大いに私は熱いものを感じたのです。それはそれでいいのです。そして、今回の西部消防と中部消防のコロナ感染対策で、自分たちの勤務編成を変更して、他所から、他の消防署から救急隊、あるいは人員を派遣してもらって業務を遂行していった。充足率が60%ぐらいのところで、知事はそのように言われましたけれども、私は現実を知っています。中部消防は62%の充足率で、私の一番近い西倉消防署は1日の勤務者が7人、あるいは8人です。救急隊は、3人は必ず確保しなければなりません。救急隊が出動時、火災の確知が入れば、4人で現場に向かうことになります。もっと言えば、その日に年休者、事故者、病欠者がいた場合には、3人で消防車を運転して現場活動しなければなりません。中部でそうですから、西部ではもっと厳しい状況があるのかもしれません。知事の言われたように、消防力の整備指針、消防力の基準では、まず、その管轄内の消防車、高層建築物があれば、はしご車が必要になります。危険物施設があれば、化学車が必要です。そういう地域の、そのまちの状況を見て、消防力の基準が、消防車の配置が決まってくるのです。そして、その乗車定員が大体5名、そこで消防力の基準が定められます。それが60%しかないということなのです。加えて、日常の消防業務では、年休、病欠も含めて、なかなか休みが取れない状況がある。風邪を押して職場に就くのは当たり前です。1人足らなくなったら現場活動に不足が生じる。みんな、そういう消防精神を持っています。でも、いつまでもそういう消防精神を持った消防職員に負担をかけていいのですかということも、私はこの場で言いたいのですよ。
加えて、近年では働き方改革が言われています。女性の活躍できる職場環境も、今、消防署でつくられています。近年は、女性消防職員を採用しようとする取組も実際に行われています。この4月1日からは、育児・介護休業法がスタートします。矢継ぎ早にいろんな内容を持ったものが提示をされて、この体制で本当に消防勤務ができるのだろうか。そこを私は言いたい。現状では、何もないとき、火事も水害も災害もないときには、このままでいいに決まっています。私も21年間、消防職員としてよく言われてきました。火事のないときは、何をしているのですか。そんなに職員が必要ですか。そんなことをずっと言われ続けてきました。でも、消防力の基準はそうではないのでしょう。行政や消防体制の危機管理、そして、その対応をどうするか。消防職員は、1日にしてなれません。1人の消防士を養成するには、半年、あるいは7か月かかるのが常です。私は、今からこの働き方改革に対応すべく、体制を整えなければならないと思います。
平成30年2月議会、今から4年前に、藤井一博議員が知事との議論の中で消防体制のことを質問し、知事は、その年に消防体制研究会をつくられました。その消防体制研究会の設置目的と、その研究内容の結果について、まずお伺いをいたします。
そして、消防団、中島議員の質問で、おおむねは了解いたしました。ただ、倉吉の消防防災課と話をしたときに、倉吉市はどうですか、倉吉は新人の職員が来たときに、研修の中でパンフレットを配布し、消防団の募集をしています。その効果が現れていることが、近年では市職員が22名、消防団員となられている。そして、先ほど御答弁いただいた教育長、教師の方が4名、消防団に入団されています。ところが、県職員はゼロなのです。知事にお願いしたいことは、県内に3,000人いるとも言われる県職員の皆さんに、どうぞ、知事のほうからメッセージとして、住まいする地域消防団に加入をお願いできないでしょうか。そのことも含めて御答弁いただきます。
知事答弁
◯知事(平井伸治君)(登壇)由田議員から重ねて消防につきましてお尋ねをいただきました。
研究会の状況等、詳細につきましては、局長の水中のほうからお話を申し上げたいと思いますが、前段でお話しになられました基本的な考え方、それは我々も共有させていただきたいと思います。先ほど申しましたけれども、現状が全てよいというわけではないと。多分いろんな火災の状況だとか、そういう災害の状況だとかに応じていろいろと変えていかなければいけない。先ほどおっしゃったように、例えば化学消防車が必要な地域になれば、そういうものを装備すると。そのため、使いこなすための人員の研修なり、育成もしていかなければならない。いろんな苦労が消防職員の皆さん、消防の世界にはあるわけでありまして、それを我々は広域団体、基本的には構成市町村、消防局がされるお仕事ではありますけれども、例えば全国のいろんな事例もありますし、横展開ができることもあるでしょうし、協力できることもあろうかと思いますので、ぜひ一緒になって消防力の維持や強化に私どもも協力をぜひさせていただきたいと思います。
非常に厳しい中でやっておられること、それは本県のように、どちらかというと、ちょっと広いところ、都市みたいな集中したところではなくて、広いところで火災の件数なども一定程度限られたところでありますと、大体消火と、それから救急と両方兼務されている、そういう運用もされたり、また、乗換運用でいろいろと装備も変えながら運用されたり、そういうことは常にあるものでありますので、一応の365日の中では動かせる仕組みになっていると思うのですけれども、ただおっしゃるように、今、新しい制度も入っていますので、育児休業のことであれば、特定雇用主として計画もつくり、そういうのができる環境をつくっていかなければいけません。実際にはされていますけれども、それぞれの消防局も計画もつくり、育休も取らせるようになっていますが、そういうようなことをすれば、それだけやはり職場のほうでそのための言わば余裕代というのをつくらなければいけませんから、だから、今の中部消防でいったら、62.1%というのが絶対正しいかどうかというと、それはやはり不断の見直しというのは必要ではないかというふうに思います。先般の消防力の研究会につきましては、様々な検討を重ねたところでありますが、一定程度は充足されているのではないかというようなことがある中で、今後も工夫していくことはやっていきましょうというようなことで取りまとめられたところでありました。
そういう中で、消防団というのの役割というのも、常備消防と一緒にやるものとして非常に重要でございます。特に鳥取県の場合、絆社会でありますから、公務員であっても、そうした別の世界、社会的貢献をしていただくことを推奨しています。消防団につきましても、これは特別職公務員でありますけれども、兼業禁止に触れるところについては、定型的にこれは解除できるようなシステムにさせていただいたり、また、こういうように社会貢献をしていることを給料の中でも、人事評価上、反映させてもらうということもさせていただいたりしております。現状、今は今月まで、1月から3月のところは、パソコンを立ち上げますと、そこに消防団に入りませんかという、そういう案内を、広告ですね、県庁がやっている広告なのですが、職員のパソコン向けには今、庁内LANで提供させていただいております。
こういうようなことで、実は消防団は消防庁の統計でいいますと、知事部局で95名、消防団に加入をしておりますし、それから、ちょっとこれはどういう経緯か、ちょっとまたあれだったら、気危機管理局長から説明させますが、倉吉市消防団にも5名加入をさせていただいております。例えば原子力環境センターの職員なども活発に消防団として活動させていただいたりしておりまして、そういう意味で、我々としては、むしろそうした消防団の加入促進をぜひ今後も図らせていただきたいと思っております。
水中危機管理局長答弁
◯危機管理局長(水中進一君)鳥取県の消防体制研究会の設置目的等についての補足の答弁をさせていただきます。
この研究会につきましては、平成30年3月の2月定例議会の一般質問を受けて、意見交換を行うという趣旨に基づいて設置したものでございます。検討会の目的につきましては、本県の消防力の現状と課題等を確認しまして、10年先程度の消防体制について研究することにより、将来にわたって持続可能な消防体制と消防力の維持、充実を目指すという目的で研究を行いました。
検討会の構成でございますが、16名で構成されておりまして、学識経験者といたしましては、鳥取大学、鳥取看護大学、鳥取赤十字病院、それから、鳥取県の消防協会の会長、女性消防団員、自主防災組織の方、鳥取市等自治体の方、各消防局の方が参加して行われました。
取りまとめの経緯につきましては、県民のアンケート、それから、4回の研究会を開催して、4回目の研究会で取りまとめ案を承認したものでございます。
検討のポイントといたしましては、周辺部での消防力の維持、充実、それから、全員参加による地域防災力の向上というポイントで検討いたしました。
現状の確認といたしましては、常備消防の現状と課題について確認するとともに、消防団の現状と課題についても確認いたしました。それから、県民のアンケートから見た消防への期待。
その検討の結果でございますが、2点ございまして、1点目が消防局相互の連携協力で、相互応援体制の拡充のためには、管轄をまたいだ消防職員の合同訓練の実施等、現場の体制整備の推進が必要というのがございました。それから、消防の指令業務の共同運用については、現時点で議論は時期尚早との意見があったということでございました。それから、消防団の充実強化につきましては、先ほどから御説明いたしましたとおり、この研究会におきましても、被用者の団員が増えておりまして、訓練参加団員の負担となっていること、また、日中の出勤事案、発生時の参集に不安があることから、住宅地でなく、事業所所在地での従業員の入団や特定の活動のみ従事する機能別消防団員制度など、入団しやすい環境づくりが必要だと。それからもう一つとして、確保のためには、女性や子供に対する働きかけが有効で、消防団員が保育園や学校の避難訓練や防災教育を手伝うことで、子供の関心を高める等の取組や、子育て世代の親子が参加する防災教育プログラムの実施を行うべきだというふうなことがございました。
今後については、幅広い意見を聞く必要が生じた場合は、有識者や県民の意見を聞く場を改めて設けるというふうな記載がございます。消防体制研究会は以上でございます。
もう1点ありました県職員の募集でございますけれども、現在、県職員につきましては、本県では98名の県職員が消防団に加入しております。それは、県職員の全体の約3.3%に当たります。市町村職員の消防団の加入状況につきましては13.1%ですので、議員がおっしゃいますように、県職員のほうが少し低いという状況でございます。
県職員の募集といたしましては、消防団の勧誘活動が本格化いたします1から3月期に県職員のPC、議員もお持ちだと思うのですけれども、パソコンを広げると、広告が出てくるのですけれども、県職員PC立ち上げ時の広告で、そこに消防団員募集のお知らせを掲載して、消防団への加入を働きかけております。
その加入のハードルを下げるために、広告では、県職員である現役消防団員から聴取したやりがいや苦労したことなどの生の声を掲載するなど、そういう取組を進めていまして、例えば令和元年度には90名だったものが、2年度には92名、3年度には98名と、近年増加傾向がございます。先日も倉吉の消防団の出初め式に行ってまいりましたが、県職員も元気よく活動しておりまして、私もそれを見に参加したのですけれども、頑張っていますと言いに来てくれまして、非常に意欲満々でやっておられるということは確認できておるところでございます。
議員がおっしゃいますように、消防団員は地域防災の中核でございますので、引き続き県職員の方には、自分のまちを守るという気持ちでもって積極的に入団していただくよう、今後も取組を進めてまいりたいと思います。
質問
◯5番(由田隆君)水中局長さんからお聞きしました消防団について、倉吉で1名おられたということでありますが、私は2月に今の担当職員から聞いたもので、そこにそごがあるかも分かりませんが、こういうことですよね。市の職員とか県の職員、公務員が消防団に入ると、兼業の届出を出さないといけませんよね。1年更新ですよ。仕事の都合でやはり無理だというようなことで、1年で辞められる方もある。毎年更新されているのかどうか、引き続いてちょっとそれを注視しておいてください。自分は入ったけれども、更新していなかったら、消滅しますのでね。そういうところもちょっと確認をお願いいたします。
それで、この研究会の取りまとめです。これを見たときに、私は我が目を疑ったのですよ。県内の消防の現状というところの常備消防、たった3行、能力のことで言えばね。消防力の整備指針に対する消防職員の充足率は77.何とか、十分とは言えないが、管轄人口1万人当たり何人。全国平均を上回っている。深みがないのですよ、深みが。せっかく16人来ていただいた人に、消防の実態を丁寧に説明する資料だとか、口頭で実態を説明されましたか。だから、こういう取りまとめになっている。辛辣に言わせてもらえば、批判を受けるかも分かりませんが、薄い、薄過ぎる。これが今後10年の持続可能性を持った消防力の基準になるのですか。何の問題もないのではないですか。現行の働き方改革には、そういう議論が1行もない。これで、10年後まで見通せますか。最後に言われました、今後問題が生じたときには、実務者で協議をする。ぜひそのように知事、この働き方改革にどう対応していくか、協議をお願いできないのでしょうか。今のぎりぎりの体制で、それができるかどうか。御答弁をいただきたいと思います。
知事答弁
◯知事(平井伸治君)(登壇)重ねてのお尋ねがございました。
もう別に言ってもいいのだと思いますけれども、さっき言っていたのは長柄さんという職員ですけれども、原子力環境センターにおられまして、この方は平成21年からずっと継続して加入しています。このほかにも4名、今、倉吉市消防団に加入しているというふうに私どもとしては登録を受けていまして、議員がおっしゃるように、問題は兼業禁止がありまして、これで一々引っかかるものですから、それを先ほどちょっと申し上げましたのは、簡略にできるように、消防団を特別扱いをして、すぐに要は許可がちゃんと下りますよと、そういう仕組みですね。実は我々でシステムをいじって、できるようになっております。ただ、ちょっとせっかく指摘もありましたので、もう一度よく確認をさせていただき、継続的な加入に支障がないかどうか。何か事例が多分あって、おっしゃっているのかなとも思いますので、その辺は調べさせていただきたいと思います。
消防体制研究会につきましては、実は議場で始まった話だったのですけれども、話を蒸し返すわけではないのですが、一応念のため申し上げたいと思いますが、要は、消防局が今、全県、3つあると。この3つあることを1つにまとめるべきではないかというのを実は当時、国のほうが問題提起をして、これに併せて、実は無線の指令を1つにまとめたほうが多分金額的には安くなると。で、その更新時期ということもありまして、あの時期にその消防体制研究会というのを開催をして、議会での議論、宿題をいただいたものですから、私どもとしても集まっていただいて議論していただいたと。それで何が起こったかといいますと、結局、消防を1つにまとめるということに対する反発が特に東部消防から出ました。それで、中西部もやはり若干落胆と。それで、結局この話はまとまりませんねということになったので、研究会の報告は、私もちょっと読み返していませんが、かなりあっさりしたものに多分なったのではないかと思います。それで、ただ、これで終わりではないですよと、今後も消防体制の議論は続けましょうということで我々も主張をして、最後に一文か何か、今後もまた協議を事務的にも続けましょうということになっていると。それが割と正直に書かれたペーパーだったのではないかなと記憶しております。
ただ、もう一つちょっと別の論点が今おっしゃったことで、問題は、働き方改革など、新しい消防体制に対してどうかということだと思います。これについては、現状、育児休暇等、これは中部消防ですと、15日ぐらい取れているということでありまして、あまり特に劣っているわけではないと思います。どの消防も似たようなものです。ただ、今度また制度が変わりますし、もともと特定雇用主としての行動計画をつくってやっていただいていますが、その辺の指導というか、環境づくりですね、働き方改革の環境づくりについては、私どものほうでも別の知見もありますので、そういうことを併せて各消防局さんのほうにも働き方改革に伴う職場環境づくりについて皆さんに情報提供をさせていただき、その促進を図らせていただきたいと思います。
質問
◯5番(由田隆君)うまく知事に取りまとめをしていただきまして、ただ、私は、それぞれの消防署の消防体制の現実を知っているのです。これから育児・介護休業法の例えばいろんな課題が出てきますよね。休業を取るかどうか、意向を聞いて、取るといったら、その体制を……。さっきも申し上げましたが、消防職員は一朝一夕に増員ができないのです。だから、年次計画的に今から対応をしなければならないのではないですかというのが私の質問の趣旨なのですよ。屈強な消防職員だって、家に帰れば、家族もおり、子供がおり、明日の元気を家族や地域の人たちからもらって、明日の消防業務に携わる。やはりそういう関係でなければいけないと思うのです。消防職員は、法律で団結権も団体交渉権もストライキ権もありません。憲法でも、15条でそういうことが指摘をされています。そういう物が言えない消防職員とも言うべき状態の中で、私は、この問題をずっと考えていたら、サイレントマジョリティーではなくして、サイレントファイアマンの声が聞こえてくるようになりました、その思いが。
《質問時間終了の合図》
知事答弁
◯知事(平井伸治君)(登壇)それでは、議長の許可を得て、答弁させていただきたいと思います。
今お話しされたことは、昭和47年に入局されて以来の非常に含蓄のあるお話だったと思います。私たちにとりまして、消防というのは非常に重要な存在であり、我々県民の生命、身体、財産を守ってくださる最後のとりでであります。特に今、ウクライナのような状況を見ていますと、それぞれの人たちが立ち上がって、戦火を交える。そのときに、先ほど陸軍のお話をされましたけれども、同じようにこの火事、それで一人たりとも住民の命をなくすまいとして、日頃から鍛錬をし、そして現場へ向かう。その消防職員の使命の崇高性というのは、我々は改めて認識しなければならないと思います。日本の場合、多分欧米のようにはまだ十分な注意が払われていないのではないかと私は思っております。自分自身もアメリカのほうで生活したことがありますが、消防職員、ファイアファイターというのはヒーローなのですね。それは軍隊などもヒーローですけれども、同じようにポリスマン、警察官であったり、それから消防士というのは憧れの職業であり、自分たちを守ってくれる大切なヒーローだというイメージなのです。そこがやはり日本の場合、もう一つ弱いのかなというふうにも思います。それがもし処遇ということに影響しているということであれば、それはやはり省みなければならないことだと思います。
現状、ちょっと中部消防のために申し上げれば、決して介護休暇をはじめとして、著しく悪いということではないとは思います。ただ、これからまだまだこうした働き方改革などで若い有能な職員が消防を志してもらわなければいけないと。民間企業のほうでもやっておられるように、やはり消防の職場というのも当然ながら、そうした生活者としても暮らせる余裕がある、家族と一緒の時間を楽しめる、そういうようなことにならなければいけないわけでございまして、その辺はよく消防局や構成市町村と問題意識を共有してまいりたいと思います。そういう中で、例えば今回の育児・介護の法律改正なども適切に職場に反映されるように、私たちも基本的な考え方をお知らせしたり、場合によっては研修等、御指導を申し上げてまいりたいと思います。